公開日 2014年12月16日
平成5年5月10日除幕
ましゅんくと なびと
見くなべて 見れば
ましゅんくや うすさ
なびや美ら 美らさ
歌意
昔、マシュンクとナビーという二人の美人女性がいた。二人とも村の若者の憧れの的で、ある日二人を招いて見比べてみたがわずかにナビーがきれいだった。
ましゅんく節 (三下調子) (伝承地:全区)
一 ヨーテー ましゅんくとなびとヨーテー
ましゅんくとなびと 見くなべて見ればヨ
ウネスィクテントウンテン
ヨーテー* ましゅんくやうすぃさヨーテー
ましゅんくやうすぃさ なびやしゅらじゅらさヨ
ウネスィクテントウンテン
二 ヨーテー さし垣の上ないヨーテー
さし垣の上ない なべら花咲かちヨ
(以下 囃子は一番と同じ)
ヨーテー* うりが実ならばヨーテー
うりが実ならば 里にむてうぇすぃらな
三 ヨーテー 下庫裡殿内の屋のくわにヨーテー
下庫裡殿内の屋のくわに 美童若者はい揃て
ヨーテー* な懇々々抱ちゆてヨーテー
な懇々々抱ちゅて 美童話のうむツァヨ
四 ヨーテー 門から饅頭餅持ちちゅすぃやヨーテー
門から饅頭餅持ちちゅすぃや 地頭代殿内ぬまなんだる
ヨーテー* あたいでぃちなますぃぬ一鉢ちゅぱちヨーテー
あたいでぃちなますぃぬ一鉢ひらんめぬ一籠ヨ
※ヨーテー*印のところは、「ウネテー」と歌われたこともある。
※「抱ちゆて」を「揃りとうてぃ」と歌う人もいる。
大意
1 ましゅんくとなべと見比べてみれば、ましゅんくは見劣りがして、なべの方がきれいだ。
2 さし垣のうえに、ヘチマの花を咲かせ、これが実ったなら愛しい彼氏に差し上げたい。
3 下庫裡殿内のはなれの小屋に、若者たちが打ちそろって、美童話に花を咲かせている。
4 門から饅頭餅を持ってくるのは、地頭代殿内のまなんだるである。住まいの近くの畑から引き抜いて作ったなますの一皿と、押し麦の一籠で(夜食にしよう)
語意
(1)ましゅんく=人名。女性の名と言われているが、男性の名であると説く人もいる。なべ=女性の名前。
見くなべて=見比べて。見やらびてみればと歌うこともあるが、それは見比べてみればの古語。 うすぃさ=うすい。見劣りがする。しゅうらーしゃ=品があって美し。さっぱりとしてきれいだ。かわいらしい。
美らさ・清らさ=けがれなく美しい。きれいだ。 (2)さし垣=垣根。 なべらばな=へちまの花。
里=彼氏。愛しい人。 うぇすぃらな=差し上げたい。 (3)屋のくわ=小さい家。はなれ。 美童=若い青年。 にんぐる=恋人。愛人。 うむっつぁ=楽しい。愉快だ。 (4)地頭代殿内=今でいう村長の家。 まなんだる=女性の名。
あたいでちなますぃ=住まいの近くにある畑から引いて作ったなます。 一ぱっち=一鉢。 ひらんめぬ=押し麦の。 まぐ=マカヤと竹皮を合わせてつくられた籠。穀物の保存用の糧秣籠として使った。
解説
ましゅんくとなべは共に美人である。二人を較べてみると、ましゅんくは劣るようであるという意。ましゅんくは渾名という説がある。島の童名にはない名前である。一説には、鉄鍋が島に入ってきたとき、これまで使っていたましこの陶器鍋と比べてやはり鉄鍋の良さを称えた歌だといわれる。
下庫裡殿内の勉強所である屋子に、美童と若者が揃いそれぞれの懇を抱いてする話が面白いということの意。昼は勉強所で夜は若い男女の遊びの場にしたのだろう。本土で若者宿というのがそれにあたる。
門から饅頭餅を持ってくるのは地頭代屋のまなんだるだという意。若者たちの家にごちそうがあったらお互いに持ち寄ったものだろう。
此の歌も八八調ではない。七五調も混入している。自由奔放によまれているのが注目される。琉歌形式では破格である。
ましゅんく節は初の三首以外は、時を異にしてよまれている。前後の関係はない。従って順番もつけられないが、打出しの歌詞は「さし垣」の歌であることはほぼまちがいない。格調のある歌である。
〔『伊江村史』551~3頁〕
見直し
美ら美らさ→しゅらじゅらさ。 うえさなや→うえすぃらな。 一ぱち→一鉢。 一まぐ→一籠。
※かつては、「うぇすぃらな」「しゅらじゅらさ」と歌われていたので、今回の検討で元に戻す。
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