公開日 2014年12月16日
平成12年度建立
吉田の親ぢ 兼好は
さわぐ浮世に ただ徒然と書いて
寄こせし
文とるしんどや
歌意
吉田は、徒然草の著者、吉田兼好を讃えた歌である。
吉 田 (本調子)〈伝承地:東江上・東江前・阿良〉
〔系統:会所踊い系<ヤマト。 踊の構成等:2人 二才踊い衣装。小道具:陣笠、扇をもって踊る 〕
一 吉田のおやじ兼好は アヤリクヌシー
さわぐ浮き世に ただつりづりと
書いて 残せし文との心中ヤ
ツィントゥン ツィントゥン ツィントゥテー
トゥントゥテー トゥドゥントゥテー
スーリースーリー イスリスリスリー
ヤートウシーハララー
二 彼の源の頼光は アヤリクヌシー
大江山路の鬼神の大将* *「大江山なる鬼神の大将」と歌うところもある。
とらえて 見たきに立ち行く心中ヤ
(以下 囃子は一番と同じ)
三 ゆぶしやぬずみはちぬずみは アヤリクヌシー
くらま育ちの牛若丸を
とらえて 見たきに立ち行く心中ヤ
大意
一 吉田兼好は騒然とした世の中にあって、ただ、手持ちぶさたに書き物をして後世に残した親爺である。
二 難解である。『伊江村史』の解説を参照ください。
三 難解である。『伊江村史』の解説を参照ください。
語意
一 おやじ=親父。じんこう=兼好。吉田兼好で徒然草の著者。つりづりと(すりずりと)=つれづれと・徒然と。 書いて残せし文=書いて残した文。古典を指す。心中= 心の中(の気持ち・思い)。 「一穏やかならざるものがある」(類)胸中。内心。
二 源の頼光=みなもとのよりみつ。平安中期の武将。満仲の長男。摂津などの受領を歴任。驍勇を以て称され、佐馬権頭に昇った。大江山の酒呑童子征伐の伝説や土蜘蛛伝説は著名。(948~1021)
大江山=(1)京都市西京区大枝(山城・丹波の国境)にある山。その坂路を「大江の坂」「老の坂」という。大枝山。(歌枕オ)(2)京都府北西部、丹後地方にある山。その頂上を仙丈ケ岳といい、酒呑童子が住んだという窟がある。源頼光の鬼退治の伝説で有名であるが、一説には(1)のことという。(『広辞苑』)大江山路は、その山の麓の路だとと思われる。 鬼神の大将=酒呑童子の大将。
三 ゆぶしゃ=不詳。島にある屋号(『村史』)。 ぬずみ=望みか 不詳。 ちのずみは=不詳。気にいったらば(『村史』)。すみは、むすめの誤りか。(『村史』) くらま育ち=鞍馬寺で育った。 牛若丸=源義経の幼名。源義経=平安末期の武将。義朝の9男。幼名は牛若丸。(1159~1189)
解説
一 吉田兼好(1283ー1350)とは鎌倉末期の歌人、随筆家である。本姓は卜部(うらべ)俗名は兼好(かねよし)と云うた。卜部兼好である。京都吉田に住んでいたので吉田姓を称した。
1324年薙髪(ちはつ)して僧となる。兼好法師という僧名に変わる。和歌四天王の一人である。文才も豊かで「徒然草」の名文集を遺した。
思うに吉田節は兼好出家後の生活を歌ったものである。「かねよし」とせず「けんこう」と僧名を唄っている。彼は元武人であったが戦争の悲惨からのがれて出家したという。(『村史』)
二 ○彼の源の頼光は 大江山路の鬼神を退治に/とらえて みたきに 立ち行くしんどよ(永山メモ)
○かの源の頼光は くらま育ちの牛若丸の/とらえてみたきに 立ちゆく しんどや(『民謡工工四』)
前の歌は歴史物語になっているが、文脈がとおらない。みたきは、みたさのことか。後の歌は頼光と牛若丸は話が合わない。時代のちがった人間同士である。が歌の意味はよくわかる。「しんど」はやはりつらい辛労である。鬼神は酒呑童子の盗賊。(『村史』)
三 ○ゆぶしゃのむすめ きのそめば/ 大江山路の鬼神の大将/ ヂフィタ みたきに たちゆく
しんどや(永山メモ)
○ゆぶしゃのすみは ちのずみは/ 大江山なる鬼神の大将/ とらえて みたきに たちゆく
しんどや(『民謡工工四』)
源頼光の鬼退治物語を歌にしたものだがよくわからない。強いて解釈すると、ゆぶしゃ屋(島の東江上にある屋号)の娘すみに気があって会ってみたいと思い、鬼神の大将の勇気もて、たち行くが、嗚呼つらいことだと解釈できる。文脈がとうらない歌詞である。二、三の替歌は程度が落ちるようである。ゆぶしゃという屋号を入れて詠むなど、本歌とは質がちがう。同一人の作でないことがわかる。多分模作であろう。(『村史』)
見直し
すりすり(徒然)→つりづり(徒然)。 寄こせし→残せし。文とる→文との。 しんどや→心中ヤ。
大江山路の=大江山なる、と歌うところもある。
※類歌「心中ふし」に準じて「つりづり」「残せし」「文との」「心中ヤ」と表記をする。
類歌
心中ふし
- 吉田のおやぢ兼好ハ さわく浮世に たゝつりつりと かいて残せしふミとの心中
- 彼源の頼光ハ 大江山なる鬼神の対し それを序に はな見の心中
〔「大和哥集」より。本田安次著『南島採訪記』所収408頁〕
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