公開日 2015年02月16日
木ぷぞ〔別名・じゅうにくわん〕(三下調子) (伝承地:東江上)
(元来、この曲には三線は入らず、楽器変わりに「木ぷぞ」を叩いて口三線(かけうた)で歌われて来たものだが、保存の為 昭和43年に玉城正徳氏が採譜した。)
一 木ぷぞのしゃくの 何の情あゆが
夜の夜ながとも すぃつぃちぃとばすぃ
二 あしゃぎから登て 花の門口村
遊で並里毛 恋し神石
三 わが行ちゅる原や あたい原ぱんた
手さじ持上れば 我身でとむり
四 手さじ持上げれば ゆすぬ目のしじさ
かしらとぅいなずぃき 手持ちゃぎより
五 月かくすユナ木 薙ぢぶしゃやあすが
うり薙ぎば里と 胴持ちぐりしゃ
六 粟ぐるやむしる 門のキザイ枕
着物や蚊帳とむて さら夜明かち
七 またもこの辻に 遊ばりがしゅゆら
このからがしちゅて 年が寄ゆら
木ぷぞ
大意
1 木ぷぞぐらいのものに、なんの情をかける必要があろうか。夜通し叩いて歌うことにしよう。
2 あしゃぎから登っていき、花の門口むらにつき、並里の野原で遊び、神石で恋をしよう。
3 わたしが行く畑は、あたい原ぱんたである。手拭いを持ち上げて合図するから、わたしと思ってください。
4 手拭いを持ち上げると、よそ目が怖いから、頭を触るふりして手を上げてください。
5 月を隠すユナ木を枝打ちしたいけれど、それを枝打ちしたら彼氏と仲良くするのが見えるから、それはできない。
6 粟殻を莚にして、門の石段を枕に、着物は蚊帳と思って、なんと夜を明かしてしまった。
7 またもこの辻で遊ぶことができるでしょうか。このままで年を重ねてゆくのでしょうか。
語意
(1)木ぷぞ=木製の煙草入れ。 夜ながと=夜通し。 (2)あしゃぎ・並里毛・神石=地名。 (3)あたい原=原名。 手さじ=手拭い。 ともり=と思いなさい。 (4)なじぶしゃやあすぃが=枝打ちしたいけれど。伐採したいが。 胴持どうむちぐりしゃ=仲の良いところを見られてしまう。 (5)粟ぐる=粟の穂。粟殻は、粟の穂をとったもの。 ちん=着物。衣。 むしる=莚。 きざい=階段。 (6)すぃちゃ=辻、十字路、三差路など。 このからがしちゅて=このまま最期の。
解説
〈木プゾー〉これは節名ではなく、木製の煙草入を叩いて楽器の代わりにしたのでその名がある。
主に三味線がわりにしたもので、音曲は口で出したので口三線と云うた。伊江島独特の民芸というべく古来から広く愛誦された。
畠からの帰り集団で、木プゾー叩いたり、鍬の柄を叩いたりして、口三線と調和させ、歌い手はすきな歌詞を唄った。毛遊びにもよく使われた。
意味は木プゾーが十二貫文したから、十二貫文の楽器ということからきたものだろうか。唄い初めに口三線をし、唄が始まると音頭とりに合わせてする。なかなか味のあるもので、これにも上手下手があったようである。文字で表記すると次のとおりである。
テン、テン、トルドンテン、テントルドンデントル、ドンテン。
トロドントロドンテントルドンテン。 (中原の表記による)
この口三線を保存するため、昭和四十三年工工四楽譜にして「民謡工工四」に収録してあるから参照されたい。でも原則は口三線であることに変りはない。では木プゾーで唄われた伊江島民謡を紹介する。(村史では、「木フゾー」になっているが「木プゾー」の誤植) 〔『伊江村史』554~5頁〕
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てぃんや蚊帳とむて → 着物や蚊帳とむて
類歌
- あしやげくだめしや朽ちるとものよでかなしい言葉のいつす朽ちゆみ〔大成196・琉全1798〕
- このからがやゆらまた拝むこともけふの出立や定めぐれしや(大成1821・琉全640散山節〕